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トランスジェンダーと医学的な治療(1)

  • 6 日前
  • 読了時間: 2分

 最近では、トランスジェンダーの人々に対する医学的な支援や治療を、性別適合医療(Gender-Affirming Care)という言葉で表すことがあります。



 これは、身体的な治療だけでなく、心理的・社会的な支援を含む、その人が自分らしく生活できるように支えるためのより包括的な医療です。例えば、出生時に割り当てられた性別について本人が悩みを抱えている場合、メンタルヘルスの専門家が、安心して生活ができるようにケアやカウンセリングを提供します。


 なお、このような精神的ケアは、本人の性自認を変えるためのものではありません。過去には、出生時に割り当てられた性別と異なる行動をとったり、自分が別の性別に属していると考えたりすること自体が問題とされ、これを矯正すべきだという考えで治療が行われたこともありました(「転向療法」)。中には、薬物や電気刺激を用いたものもありましたが、本人が周囲に合わせて振る舞いを変えるようなことはあっても、性自認そのものが変化するという効果は疑わしいものでした。そもそも、トランスジェンダーの人々が感じる苦痛は、その人の性自認それ自体がもたらすものというより、身体的な違和感や、周囲から受ける否定や抑圧によって生じるものだと考えられます。性自認の矯正を目的とした治療は、こうした苦痛を軽減するどころか、かえって強めてしまうことが多かったのです。


 性別適合医療では、本人の希望に応じて、身体的な治療が行われます。重要な役割を果たしているのがホルモン療法です。これは、性ホルモンを投与することで、身体的な特徴を、本人が望む性別に近づける治療です。効果の現れ方や程度には個人差がありますが、脂肪や筋肉の量や付き方が変化し、望む性別に近い体つきや顔つきになることが知られています。


 トランスジェンダーの男性(出生時に女性として割り当てられた人)の場合には、声が低くなる、ヒゲが生える、トランスジェンダーの女性(出生時に男性として割り当てられた人)の場合には、乳房が発達するといった変化も見られます。


 これ以外にも、トランスジェンダーの男性の場合は乳房の切除、トランスジェンダーの女性の場合はヒゲや体毛の脱毛といった処置が行われることがあります。これらは、本人の身体への違和感を軽減するだけでなく、本人が望む性のあり方で日常生活を送るうえで、大きな意味を持ちます。


 性別適合医療では、このほかに「性別適合手術」と呼ばれる外科的な治療が行われる場合もあります。これについては、次回に説明します。

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