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性同一性障害特例法について

  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

 トランスジェンダーの中には、出生上の割当てとは異なる性で生活を送っている人々が数多くいます。そのような人々にとっては、身分証などの性別の記載が生活をしていく上での大きなハードルとなります。



 わたしたちは、就職や就学はもちろん、住居の契約、海外渡航、レンタルサービスの契約といったさまざまな場面で、自身の身分を証明する書類を提示します。多くの場合、そこには出生時に割り当てられた性別が記載されています。そこで、その人の外見や生活の実態と、書類上の性別が食い違っていると、さまざまな問題がおきます。


 まず、本人であることを明らかにするはずの性別の記載が、かえって本人かどうかの判断を混乱させる結果となります。事情の説明をするとしても、本人が明らかにしたくないような生い立ちや、これまで受けた治療のようなプライベートな事柄を相手に想像させることになります。そして、説明をしても、かえって差別的な扱いを受けることが少なくありません。例えば、就職で面接を受けて内定を得たものの住民票などの書類を出したところ内定が取り消された、海外への渡航で外見とパスポートの性別が異なるため入国ができなかった、といった話があります。


 こうした問題を解決するために、2003年に制定されたのが性同一性障害特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)です。この法律によって、一定の要件を満たす場合に、戸籍や住民票などの性別を変更することが可能となりました。


 しかし、この法律に定められた要件は厳しいものでした。二人以上の医師による診断に加え、成人であること、婚姻していないこと、子がいないこと、生殖能力を失っていること、望む性別の性器に近い外観を持つことが定められていました。結果として、本人が家族を持つことが制限される、身体への負担やリスクが大きい手術を、事実上強いられるといった問題があることが指摘されてきました。


 その後、こうした要件については見直しが進められてきました。子がいないという要件は「未成年の子がいない」へと改正されています。生殖能力の喪失を求める要件については、最高裁で憲法違反と判断され、実質的に無効となっています。性器の外観に関する要件については、憲法違反とする判断が出ているものの、裁判所によって判断が分かれています。制度全体としては、一定の改善は見られるものの、十分とは言えないという評価が一般的です。


 この法律をめぐっては、SNSなどで「公衆浴場で混乱が起きる」といったような誤った情報が広がることがあります。しかし、公衆浴場等における男女の区別については、「身体的特徴をもって判断する」と厚生労働省が通知を出しており、身分証が女性だから女性浴場を使う、男性だから男性浴場を使うというものではありません。誤った情報に踊らされないよう、法律の目的を正しく理解することが求められます。

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