性的に引かれる方向を表す「性的指向」……3つの「性」③
- 永易至文
- 6月12日
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更新日:7月31日
性といえば「恋愛」、とは誰もが抱く発想でしょう。近年は学校の保健体育や道徳の教科書にも「思春期になると異性に性的に引かれるようになります」といった記述があります。

恋愛感情をともなわずとも、性的快感や満足を得たいという性的欲求は、多くの人が抱くものです。
自分の性(正確にはジェンダーアイデンティティ)を基準にして、恋愛感情や性的な関心がどういう対象に向かうのかを示す概念が性的指向(sexual orientaition)です。原語のorientationには、嗜好や志向ではなく、指向の訳語が使われています。気づいたらそちらの方向を向いていた感じを表すのに、指向という訳語が選ばれています。1990年代に「府中青年の家裁判」を提起したアカーという同性愛者の当事者団体が、裁判の証拠として海外文献を翻訳するなかで創出した語です。それまでは日本にこの概念はありませんでした。
性的指向では、異性へ向かうものをヘテロセクシュアル(異性愛)、同性へ向かうものをホモセクシュアル(同性愛)、両性へ向かうものをバイセクシュアル(両性愛)、他者に対して性的欲求を抱かないことをアセクシュアル(無性愛。aは否定の接頭辞)と呼んでいます。これらは自分の意志で自由に取捨選択できるものではありません。
よく同性愛の人に「どんなきっかけで目覚めたの?」と、含み笑いしながら聞く人がいました。当事者にすれば、気づいたら同性に惹かれていたのです。多くの異性愛者が、気づいたら自然に異性に惹かれていたのと同じように……。
*このコラムは、台東区の公式見解を表すものではありません。