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文科省資料の変遷から見る“学校と性的マイノリティ”

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

性的マイノリティの子どもと学校とのかかわりを理解するために、ここで文部省・文部科学省が性的マイノリティについて触れた文献をご紹介しましょう。



 1979年に文部省が刊行した教師用の指導書『生徒の問題行動に関する基礎資料――中学校・高等学校編』では、「同性愛」が「倒錯型性非行」のひとつとして挙げられていました。


 この指導書では、同性愛を「性的な行為が同性間で行われる場合」と定義し、「同性愛は、アメリカなどでの“市民権獲得”の運動もみられるが、一般的に言って健全な異性愛の発達を阻害するおそれがあり、また社会的にも、健全な社会道徳に反し、性の秩序を乱す行為となり得るもので、現代社会にあっても是認されるものではないであろう」と記述し、「専門機関による治療が望まれる」としていました。当時の性的マイノリティへの認識がうかがわれ、逆に興味深い資料です。


 この指導書は、1994年に同性愛者の当事者団体による申し入れから、記述の削除と改訂がされました。


 直接否定しないかわりに、“黙殺”するという対応もありました。


 現在、特別な教科として実施されている道徳科では、出版社が発行する検定済み教科書が使用されていますが、その前段階で文科省が2014年から『私たちの道徳』という教材を発行し、全国の学校で使用されていました(現在も文科省のウェブサイトで全ページが公開されており、教科書と組み合わせて印刷し、授業で活用することが推奨されています)。


 中学生版の「異性を理解し尊重して」という項目では、「好きな異性がいるのは自然なこと」という小見出しで、男女交際のありかたを記述しています。しかし、冊子のどこにも性的マイノリティの存在は示唆されていません。これが、「好きな同性がいるのは不自然なこと、異常なこと」という裏メッセージとして、子どもたちに届きます。前項でいう「ヒドゥン・カリキュラム」です。


 現在使われている検定済み教科書では、保健体育や道徳科にとどまらず各種の教科で、性的マイノリティについても記述がされるようになりました。性的マイノリティの自覚がある子どもたちにも、きっと大きな励ましになっているでしょう。


 文科省が性的マイノリティの子どもたちの支援に直接言及したのは、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(2015年4月30日)という通知でした。この通知では性同一性障害にとどまらず「「性的マイノリティ」とされる児童生徒」という言葉で、子どもたちのなかにも性の多様性があることに言及し、相談体制等の充実を求めています。翌年にはこの通知にもとづく教師用の資料集も発行されました。こうした文科省の姿勢が、学校現場での取り組みを後押ししています。

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